志賀ルート

志賀ルート


土木学会デザイン賞2001最優秀賞受賞


自然と共有する道づくり

志賀高原の豊かな自然環境は、豊富な水源とそれを基盤にした原生自然にあります。志賀ルート建設に伴い、このエリアで成立している生態系へのインパクトを最小限に食い止めるよう現地調査を重ね、有識者へのヒアリング等も参考に出来る限りの配慮を行いました。

志賀高原の水は、人々の飲料水、温泉の水源、さらに動植物の生息環境の糧として重要な資源であり、その水源周辺は上信越国立公園特別保護地区にも指定されています。当該道路のルート選定にあたっては、特に水源への影響を回避する道路設計を行いました。

生態系に配慮した道路線形

志賀ルート地山に沿った道路線形を基本に横断勾配の大幅な改良はせず、新たな土地に改変を極力避けることにより、沿道の森林植生の保全に努めました。
道路周辺に生息する動物たちの環境を守るため、極力土工構造による地域の分断や地形改変は避け、橋梁やトンネルを用い動物の生息環境を保全しました。また、やむを得ず移動経路を分断する箇所には動物専用のトンネルを数カ所に設置しました。なお、移動経路設置後、動物がこれを利用していることを確認しています。

地形に沿った線形

動植物の生息環境や景観に配慮した法面構造

表土は1cmできるのに100年から400年かかるといわれます。工事時に、まずその表土を丁寧に採取・保管し、これを新設法面に移すことで自然の復元力に期待しました。今では道路法面に樹木が成長し、緑豊かな道路となっています。この巨石積み擁壁および表土復元による法面形成は、植生の保全や景観上好ましいばかりでなく、小動物の生息場所として機能します。

巨石積みの緑この志賀ルートにある法面は、特にトンネル工事中現地で掘り出された巨石を空積みして造られています。これにより、山の呼吸を促し木本類の生育を容易にすると同時に、自然環境に調和した道路構造を実現しました。

巨石の緑

周辺環境と調和した橋梁デザイン

志賀ルート山岳部に計画された3つの長大橋および中小橋梁は、豊かな自然環境を極力改変することなく、また既存景観を阻害することのないように注意深く計画を行いました。

橋梁計画における統一配慮事項として、斜面上の基礎工施工に地山の改変が少ない深礎工法を採用し、上部工は周辺植栽に影響が少ない架設工法を選定できる鋼桁を採用しました。各橋梁の橋脚は形態・架橋位置に相応しいデザインを個々に検討しました。

なお、フェイシアラインの連続、橋台部の形態調整、付属物処理など、各部のディテールについても相応しい配慮を随所に施しています。

十二沢橋:八角柱T型橋脚

坊平橋:円柱T型橋脚

清水沢橋:大きな面取りを施した壁式橋脚
清水沢橋

所在地 長野県下高井郡山ノ内町志賀高原
事業者 長野県 中野建設事務所
竣工期間 1993年〜1997年