ニュースリリース

2009年1月7日

NE-RESOLVE空中電磁法システム始動のお知らせ


当社の優位技術である空中電磁法(※1)を用いた地質・地盤調査は、1992年にカナダから測定機器を導入し、旧建設省土木研究所との共同研究を経た後、土木地質分野に適用するための技術を独自に開発してきたものであり、今や130件を超える適用実績を蓄積するまでになっています。そして、その適用分野の拡大と高精度化を図るため、今回新たに『NE-RESOLVE(リゾルブ)空中電磁法システム』を始動させました。

空中電磁法は、電磁誘導作用を原理とする物理探査法です。ヘリコプタに曳航した電磁探査機器から送信した交流磁場(1次磁場)の強さと、1次磁場によって地盤で発生する交流磁場(2次磁場)の強さとの割合から、磁場が透入した深度までの地盤の平均的な比抵抗(※2)を求めます。磁場の透入深度は、送信する交流電流の周波数によって異なるので、複数の周波数を同時に用いて測定することで周波数に応じた深度の比抵抗情報が同時に得られ、深度方向の比抵抗構造を把握できます。さらに複数の測線に沿って調査することによって、対象地盤の3次元的な比抵抗構造を把握することができます。

システムの概観

システムの概観

測定状況

測定状況

比抵抗は、地盤の間隙率、飽和度、固結度、粘土鉱物含有率、温度、岩盤強度、地下水の導電率及び透水係数と定性的な関係を示し、抵抗値が低い地盤ほど施工上不良な地質である場合が多いことが知られています。従って、電磁探査は電気探査と比較して粘土層や岩盤中の帯水層のように電気を通しやすい地層の抽出能力や分解能が高く、その中でも空中電磁法は他の手法と比較して以下の特徴を有しています。

  • 関係地権者の土地に立ち入らずに調査できる。
  • 急峻地形やアクセス困難な場所でも調査できる。
  • 短時間で広範囲の調査ができる(広範囲の地質調査としては低コストである)。

近年、適用実績の増加に伴う施工結果との対比事例の蓄積により、空中電磁法の解析・処理技術が大きく進歩してきました。そのため、より品質の高いデータを取得できる測定システムの導入が求められていました。今回導入する『NE-RESOLVE空中電磁法システム』は、より一層の高品質なデータを取得する測定技術と高精度の解析・処理技術を組み合わせることによって、ボーリングや他の既往物理探査(弾性波探査、地上電気探査)などの“特定箇所の地盤評価方法”とは全く異なる“面的な地盤予測技術”を確立することを目指して開発されたものです。

 

『NE-RESOLVE空中電磁法システム』の特徴は次のとおりです。

データ取得の高品質化

(1)完全デジタル化
従来、ヘリコプタに曳航する電磁探査機器からヘリコプタ内のコンソールユニットへの情報伝達はアナログ信号でしたが、ノイズの影響を除去できず、特に地盤深部の解析に支障を来していました。そこで、情報伝達系統を全てデジタル信号に置き換えることによって測定システム上のノイズを除去し、地盤深部のデータ精度の向上を図りました。

(2)測定周波数の増設
交流磁場を送受信するコイルは、配置方法によって感度特性が異なります。下図に示すように水平配列は、あらゆる地盤に適用できるものの、数m規模の微少な比抵抗構造は捉えることができません。一方、鉛直配列では、数m規模の微少な比抵抗構造を把握することが可能ですが、適用できる地盤が限られます。そこで、従来の水平配列(5周波数:140,000Hz、31,000Hz、6,900Hz、1,500Hz、340Hz)に加えて、地盤深部の微少な比抵抗構造を把握する目的で鉛直配列の周波数(3,300Hz)を増設し、地盤深部の微細な比抵抗データの精度向上を図りました。

コイルの水平配列

コイルの水平配列

コイルの鉛直配列

コイルの鉛直配列

 

解析・処理技術の開発

(3)高精度の比抵抗値解析技術
従来の解析手法では、測定コイル毎に比抵抗値を解析していましたが、浅部の地盤の影響を除去することが困難でした。今回、比抵抗差分解析の導入により、地盤の上層の影響を取り除き、地盤深部の比抵抗値の精度を大幅に向上させました。

(4)微細な比抵抗構造の処理技術
地盤の物性値である比抵抗(比抵抗構造)から設計・施工に必要な土木地質的情報を抽出するために、従来から比抵抗のコントラストが着目されていました。これは空中電磁法に限らず比抵抗を扱う物理探査手法の一般的特徴となります。当社では、蓄積された施工結果との対比事例を基に、客観的な比抵抗コントラストを示す処理技術の開発に成功しました。

これらの解析・処理技術を用いた調査結果は、トンネル施工の実績結果との対比においても極めて良好であり、専門技術者を介さずに発注者・設計者・施工者に対して不良地質の情報を定性的・視覚的にわかりやすく提供できることが確認されています。

比抵抗差分解析と比抵抗コントラスト処理技術

比抵抗差分解析と比抵抗コントラスト処理技術

従来手法と比較して、モデル地盤(左欄)を良く捉えた解析・処理技術であることがわかります。

 

当社は、今回始動させた『NE-RESOLVE空中電磁法システム』を用いて、総合技術コンサルタントとして、地球環境保護と防災・減災による国土保全の視点から、建設事業の効率化に向けた価値ある地盤情報を発信し続けてまいります。

※1: 空中電磁法
電磁探査法の測定装置をヘリコプタに曳航して探査する方法であり、元来、広い地域において導電性鉱床を迅速に探査する目的で開発され、発展してきました。
※2: 比抵抗 
比抵抗の定義は「単位断面積を通る電流に対する単位長さ当たりの電気抵抗」で、断面積S(m2)、長さL(m)の均質な導体の電気抵抗R(Ω)は、R=ρL/Sで表され、このときの比抵抗定数ρが比抵抗と呼ばれます。

PDF『NE-RESOLVE空中電磁法システム』始動のお知らせ(PDF:112KB)

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