大日本コンサルタント株式会社

国道改築のための道路予備設計

伊藤 大

東京支社 道路交通計画室 道路交通計画室
入社:1998年
専攻:土木工学
保有資格:技術士(建設部門)
一級土木施工管理技士

伊藤 大

東京支社 道路交通計画室 道路交通計画室
入社:1998年
専攻:土木工学
保有資格:技術士(建設部門)
一級土木施工管理技士

分野を超えた連携で人々の安全・安心を実現

地形が急峻で山地が多く、さまざまな自然災害にさらされる我が国では、人々の生活基盤と安全・安心を確保するため、高度な技術に基づくインフラ整備が必要とされてきた。

特に、山間部に暮らす人々にとって、近隣の都市へと繋がる道はアクセスルートとして極めて重要であり、その整備は、日常生活を営むために必要不可欠なものである。

当該路線周辺図宮崎県の山間部に位置する椎葉村と、広域生活圏の中心都市である日向市を結ぶ国道は、椎葉村の人々の暮らしを支える「命の道」であった。しかし、現道は幅員が4~5mと狭く、見通しの悪いカーブが連続し、日常生活や産業活動に不便を強いられていた。入社5年目となる2003年、九州支社道路交通計画室に所属していた伊藤は、地域の人々の安全・安心の確保のため、「国道改築のための道路予備設計業務」に取り組んだ。

山間部に暮らす人々の生活を支えるアクセス道路の改築設計

「国道改築のための道路予備設計業務」は、どのような業務でしたか?

当該路線は、道路わきの山岳斜面上に地すべり・斜面崩壊の痕跡が見られ、現道上にも落石が多く見られました。また、路線自体も、すれ違いが困難な狭隘区間や、見通しの悪い急カーブ区間が続き、安全や安心を阻害していました。

このため、これらの課題を解決し、生活基盤としての利便性と人々の安全・安心を実現するために、現道の拡幅や別ルートの検討を含む道路予備設計*を行いました。

当該路線付近の山深い山地

当該路線付近の山深い山地

私は主担当技術者として、管理技術者のもと、橋梁計画以外のほぼ全般、つまり全体路線計画および道路予備設計、トンネル坑口位置の選定、路側構造物の立案や選定を行いました。また、当該区間の事業化に向けて費用便益分析を行い、必要性を整理するなど、事業認可資料の作成業務に従事しました。

* 道路予備設計:道路のルートや構造物の位置について、最適案を選定し中心線を決定するとともに、平面図や縦横断面図等を作成すること。道路予備設計後の「詳細設計」で、工事に必要となる詳細な図面や報告書を作成する。

業務を担当する中で、直面した困難はどのようなものでしたか?

道路設計の知識だけでは、とても仕事が進まないことを痛感しました。

特に、本業務の対象地域は、急峻な山岳地形上に、地すべりや斜面崩壊の痕跡が多数見られたため、地質・地盤といった知識が重要となりました。対象地域は、九州の中でも最も山深く、河川沿いの多くの箇所が断崖であり、河川にえぐられたV字谷沿いには、阿蘇山からの噴火物が堆積していることが分かっていました。

空中電磁法による地質調査

空中電磁法による地質調査

また、当該路線を対象に、当社の独自技術である 空中電磁法 による地質調査が実施されており、この調査によって堆積物の分布状況や「比抵抗分布」、「磁気強度分布」が明らかになっていました*。

しかし、慣れない用語ばかりの調査結果をどう解釈すればよいのか、また、それを道路設計にどのように活用するのか、技術資料や文献を調べても分からず、道路技術者だけではとても対応することができませんでした。

 *「比抵抗」は電気の流れにくさを表す。ヘリコプターから吊り下げた計器から電磁波を発し、比抵抗や磁気強度の分布を測定することにより、地質構造が明らかになる。
 当該路線を望む(1)

当該路線を望む(1)

当該路線を望む(2)

当該路線を望む(2)

他分野の技術者と連携しながら、分野横断的な問題を解決

その課題にどのように対処されましたか?

総合コンサルタントである強みを活かし、空中物理探査を扱う技術者、地盤防災の技術者やトンネル技術者、橋梁技術者との協働・連携作業により、困難を乗り越えました。

特に設計の初期段階では、長年、ゼネコンで山岳トンネルに携わってきた技術者とともに現地を踏査し、道路設計に対する妥当性や地質・地盤に対する留意事項等のアドバイスを頂きながら業務を進めていきました。

他分野の技術者と一緒に現地に赴き、また協議を重ねる中で、各分野の専門的な知識について説明してもらったことや、道路設計への反映のさせ方について助言してもらったことが、課題を解決していくことに繋がりました。

考えても分からないことはある。「誰に聞けば解が出てくるか」を把握するように

本業務を通じ、さまざまな分野で相談できる技術者の存在を知ることができました。また、「専門分野は専門の方に相談することが非常に重要である」ということを学び、「社内外の誰に聞けば最適解が出てきそうか」ということを常に把握しておくようになりました。さらに、道路の技術者には、多種多様な技術を融合して活用するためのプロモート能力が重要であることを痛感し、道路分野の専門的応用能力とともに身につけるよう、現在も心がけるようにしています。

同期や後輩とバーベキュー(右から3人目が本人)

同期や後輩とバーベキュー
(右から3人目が本人)

伊藤によれば、道路分野の面白さは、「技術に際限が無く、道路設計を通じてさまざまな分野の技術者と協働・連携できること」。この業務を通じて知り合った技術者とは、その後、別の業務で課題にぶつかったときにも相談を持ちかけることができるとのことである。

現在所属する中部支社の道路交通計画室は、他支社からの支援が多く、東京や北陸から社員が立ち寄った際は、毎回のように飲み会が行われる。また、部署の同僚とは、業務を離れても親しくしており、昨年は中部支社の地元プロ野球チームである中日の試合を観に行った。今年も部署の仲間とスポーツ観戦に行く予定だという。