空中電磁法による地盤調査

空中電磁法による地盤評価 NE-resolve
 

空中電磁探査とは

空中電磁探査は『地下水の分布状況を把握』において最も効果を発揮する調査方法です。

地盤の土砂や岩盤は含水量や粘土分含有量などの状態によって地盤の『比抵抗』と呼ばれる電気的特性が異なるため、空中電磁探査によって比抵抗を調査・解析することで地盤状況を推定します。

地下の比抵抗分布を3次元的に測定・解釈することによって地下の地質状況を判定するものであり、広範な地域やアクセスが困難な山岳地域などにおける地質調査、地すべり調査、各種路線計画などに有効な調査技術です。

 

空中電磁探査測定システムの特徴

  • 空中から調査を行うため、調査地への立ち入りや土地改変を伴わず広い山地斜面でも効率よく地盤情報が取得できます。
  • ボーリングなどの点や電気探査など線的な地質調査ではわからない空間的(面的)地盤状況が推定できます。
  • 地下水の分布を3次元・広範囲で推定できます。

 

空中電磁探査|測定飛行+比抵抗ラプラシアン解析-3D

 

UAVによる空中電磁探査

  • 100~200m 程度(※条件により最大400m程度)
  • 普通山地で地上電気探査を実施する場合(たとえば測線長1km)では、コスト的にUAV空中電磁探査が有利です。
  • 2時期(豊水期・渇水期など)のデータ取得すると差分で対策の効果状況や地下水分布状況が視覚的に把握できます。

 

ヘリコプターによる空中電磁探査

  • 深度200~250m程度
  • 測線上約1m間隔で測定
  • 水平分解能5~10m程度

 

適用事例

道路ルート選定調査

不良地盤帯を避け、
最適ルート選定によるコスト縮減!
道路事業の初期段階である予備設計や概略設計時に、不良地盤の分布を確認できれば、これを避けて良質地盤上に道路ルートが選定できるため、道路の建設工事・維持管理コストを縮減できます。また、問題点が絞り込めれば効率的な調査が実施できます。広域の地質調査に適した総合空中物理探査法は、道路ルート選定調査に大きな威力を発揮します。

道路ルート選定の調査事例
道路事業計画地には、不良地盤(粘土化変質帯)の存在が懸念され、本探査法が実施されました。その結果、不良地盤は低比抵抗領域(暖色部)として特定でき、Aルート上に広範囲に分布することが判明しました。このため、良質地盤を通過するBルートが選定されました。広域の地質状況が確認できる本探査法を事業の初期段階に導入することで、調査の効率化とトータルの調査費用の節減ばかりでなく、道路の建設工事及び維持管理におけるコストを縮減できました。

地すべり調査

地すべりの位置・規模の把握による、効率的な対策工の立案でコスト縮減!
地すべりの調査では、斜面内部の情報を確認することが重要です。斜面内部の不安定要因を把握できれば効率的な調査・対策工が可能になります。総合空中物理探査法は、このような調査に大きな威力を発揮します。特に、粘性土地すべりに対して極めて有効で、潜在的に不安定な斜面の抽出ができ、斜面管理に有益な地盤情報を提供します。

地すべりの調査事例(秋田県:澄川地すべり)
広範囲に熱水変質(温泉)による粘土化が認められる澄川地すべりとその周辺地域は、低比抵抗(10Ω-m以下)を示し、不安定斜面であると予想されました。その後、A、Bの斜面でも地すべりが発生し、本探査法による不安定斜面抽出の妥当性が証明されました。また、比抵抗解析から想定された澄川地すべりのすべり面の深度は、ボーリング結果と良く対応したものとなり、地すべり地における斜面内部の調査手法として、本探査法の有効性が示されました。

道路防災調査

地質データベースに活用し、効率的な構造物の維持管理
道路の維持管理は、構造物の変状調査とともに周辺の地盤性状を加味した地質データベースを用いることで効率的に実施できます。路線全域の不良地盤を抽出し、地質データベースとしての活用が期待される調査手法として、総合空中物理探査法が非常に有効です。

道路防災の調査事例
泥流堆積物及び凝灰岩は、低比抵抗領域(暖色部)に対比されます。比抵抗から判断して、いずれも粘土化が著しく、地すべりを起こしやすい不安定な斜面であると予想されます。実際、国道沿いの低比抵抗領域では多くの変状が報告されています。
断面図は、湯殿山スキー場において融雪期に発生した地すべりの比抵抗解析例です。比抵抗解析で得られた地すべりの厚さ、移動土塊と不動岩盤の性状の違いは、ボーリング結果と良く対応したものとなり、本探査法の妥当性が証明されました。

ダム地質調査

ダムサイト及び貯水池周辺の地質状況把握による全体計画の効率化
総合空中物理探査法は、広範囲にわたる高精度の地質調査を迅速かつ低コストで実施できるため、調査対象が広範なダム地質調査に適しています。ダム建設関連全域の地質状況を視覚的に捉え、ダム軸はもとより貯水池周辺の地すべり調査、原石山の評価や付替道路の選定調査に大きな威力を発揮します。

ダム計画地での調査事例
河床沿いに低比抵抗領域が、左右岸には高比抵抗領域が分布しています。これは、ボーリング等で確認された地盤性状と良く対応したものとなっています。このことから本探査法は、地盤性状の確認に適しているといえます。
骨材の正確な賦存量を確認する原石山の調査には、高い精度が望まれます。地形の影響を大きく受ける地上電気探査では、その結果に偽像が出現するなど、地盤性状を正確に把握することは困難です(上画像・下)。しかしながら、本探査法では地形の影響を受けず、かつ3次元的に地盤性状を正確に確認できるため、有力な調査手法といえます。

地下水汚染調査

産業廃棄物不法投棄サイト等の地下水分布から汚染区域を特定
地下水汚染対策は、汚染物質の特定とともにその汚染範囲を明確にすることが必要です。電解質を多量に伴う汚染現場の場合、3次元的な汚染範囲の特定には比抵抗異常を探知する総合空中物理探査法が、大きな威力を発揮します。

不法投棄サイトでの調査事例
産業廃棄物不法投棄サイトにて実施した本事例では、産業廃棄物自体が低比抵抗異常を示し、かつ汚染地下水を反映した比抵抗分布が広がっています。断面位置付近の低比抵抗領域(赤色部)は、推測されていた不法投棄サイトに対応します。汚染範囲は、比抵抗データから予想以上の広範囲におよんでいることが推定されました。
廃棄物自体の比抵抗はその含有物によって必ずしも低比抵抗を示さないものもありますが、汚染水は低比抵抗を示すため、正確にその分布範囲を特定することができます。